CODEX 5. 顧客の拡張による成長、どう進めるか?
顧客は、遠くにある「新しい市場」ではなく、最初の顧客が指し示す身近な場所で見つかります。機能の拡張と課題の拡張の違いを見極め、顧客の信頼をたどって一歩ずつ成長する隣接市場攻略のフレームワークを見ていきます。
機能の拡張と課題の拡張を区別しなければなりません
顧客の拡張に失敗する最大の理由は、自社が解決した「課題」ではなく、自社が持つ「製品の機能」を広げようとするからです。
機能の拡張
「うちの製品にはこんな機能もあるから、あの人たちも気に入るだろう」という製品中心の考え方です。ロックバンドが突然演歌を歌い出すようなものです。誰にも歓迎されない可能性が高いでしょう。
課題の拡張
「自社が解決したこの痛みを、世の中のほかの誰が同じように抱えているだろうか?」という顧客中心の考え方です。ロックバンドが、自分たちの音楽を愛してくれる新しい街を求めてツアーに出るようなものです。
私たちの本当の資産は、製品のコードではなく、特定の課題を解決する中で得た顧客の信頼と経験です。成長とは、この無形資産を携えて、同じ痛みを抱える次の顧客を探しに出る旅であるべきです。
ボウリング・アレイ戦略
ジェフリー・ムーアの「ボウリング・アレイ」戦略は、この複雑な登攀の経路を示してくれる強力な羅針盤です。この戦略の核心は、「最も手堅い1本目のピン(初期市場)を倒し、その勢いですぐ隣にある次のピン(隣接市場)を連鎖的に倒していくこと」です。
第一に、同じ地形
次のホールドは、今自分が足をかけている岩と、質感や形がほぼ同じでなければなりません。つまり、次の顧客は最初の顧客と根本的に同じ課題を抱えている必要があります。
第二に、つながったルート
次のホールドは、今の位置から腕を伸ばせば確実に届く場所になければなりません。つまり、最初の顧客の成功事例が次の顧客に直接影響を与え、その購買決定において強力な参照(Reference)の役割を果たす必要があります。
結局、私たちが探すべき「次の顧客」とは、最初の顧客をうらやましそうに眺めながら、「あの人が使っているものなら信頼できそうだな」と言う人なのです。
PayPalはいかにしてeコマースの絶壁を制覇したのか
PayPalの成長戦略は、eコマースという巨大な絶壁を登った、教科書どおりのロッククライミングのようなものです。彼らは絶壁全体ではなく、最も手堅く確実な最初のホールドを見つけ、そこに全力を集中しました。
彼らが最初に見つけ、しっかりとつかんだホールドは、「eBayのパワーセラー」たちでした。当時、彼らはオンラインで最も活発に活動していましたが、クレジットカード決済を受け付けるのが難しく、小切手や郵便為替では遅すぎるという、「事業の成長を妨げる痛み」を抱えていました。PayPalはメールアドレスだけでこの課題を完璧に解決し、パワーセラーたちの熱烈な支持を受けながら、最初のホールドを完璧につかみました。
このとき「eBayの購入者」は、自分が信頼する出品者の商品ページで、「PayPal Accepted」というロゴを何度も目にすることになります。購入者が心の中で抱く問いは、「あの決済システムは安全なのか?」ではありません。「自分が信頼しているあの出品者が使っている方法なら、自分にとっても一番いい方法なのでは?」なのです。
パワーセラーと購入者は、「不便で不安な決済」という同じ痛みを共有しており、広告ではなく実際の取引相手の成功事例が、最も強力な「信頼の証拠」になりました。PayPalはこの強力な「信頼のつながり」をたどって、次のホールド、つまり購入者たちに向かって手を伸ばし、eコマースという険しい絶壁を安全に登ることができたのです。
ロッククライミング式・隣接市場の攻略法
ステップ1. 成功の「お墨付き」を得る
次の段階に進む前に、今いる位置が安全かどうかをまず確認しなければなりません。最初の顧客市場で圧倒的な1位になり、彼らが自社の成功を保証する「証明書」になるようにする必要があります。「この会社なしでは仕事が回らない」と言われるようにならなければなりません。
ステップ2. 顧客の視線をたどる
次のホールドは、自社ではなく、最初の顧客が指し示す場所にあります。彼らの成功を最も近くで見てうらやましく思い、彼らの推薦に真っ先に耳を傾ける人を探さなければなりません。顧客に直接聞くのが一番の近道です。「私たちを一人に薦めるとしたら、誰に薦めますか?」
ステップ3. 同じ課題かどうかを点検する
どれほど近く見えても、次のホールドの質感は微妙に違うかもしれません。新しい顧客層に会い、彼らの文脈でも課題が同じ形と強さで存在しているのか、自社の解決策が引き続き有効なのかを、一から改めて検証しなければなりません。
自社の成長計画は、市場の地図(TAM)の上に描かれていますか?それとも、顧客との関係図の上に描かれていますか?
brunch作家のjaha Kim氏の同意のもと、[Startup Codex 22]のコンテンツを活用して制作しました。
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